フォレストコラム
林業へ携わるすべての方へ。林業における日本の現状や先進国の状況等お伝えいたします。
第5回薪びと祭りin秋田梅内に参加してきました
秋田県能代市二ツ井町梅内地区で行われた、第5回薪びと祭りin秋田梅内に参加してきました。
東北六県で輪番で開催されている、薪に関係する人たちの交流と勉強を兼ねた集まりです。
今回の会場となった秋田県能代市二ツ井町は、明治14年に明治天皇が当地を訪れ、素晴らしい景色の山麓で皇后と待ち合わせをし、待つ間に皇后への恋心を歌に詠んだことで有名な町です。
その場所は、きみまち阪と呼ばれ公園として整備されています。
その関係で、恋文の里とも呼ばれ、全国から恋文が寄せられることで有名な町だそうです。
能代市二ツ井町は、かの有名な白神山地の登り口となっており、登山客でもかなり賑わっています。
また、かつては東洋一の貯木場を有し、北前船により全国に秋田杉を供給した、歴史ある林業の町でもあります。昔から日本の中心につながっていた、文化レベルの高さを感じます。
その二ツ井町から白神山地に向かうところに梅内聚落はあります。
集落ではなく、聚落と書きます。ここにもこだわりを感じます。
40軒ほどの小さな集落ですが、ほとんどの家に薪ストーブや薪風呂があり、今でも薪を常用しています。
聚落の管理する広大な共有林を所有し、毎年皆で均等に薪を分配しています。
分配といっても、各自の薪取り場(山林ですが)をくじ引きで決め、木の伐倒から搬出まで自己責任で各自が行うかたちです。その現場で、今年の抽選会に立ち会うことが出来ました。
昔の日本の山村集落の原風景的なお営みがそこにはありました。
薪文化を大事に継承していくことが、愛おしく思えました。
日本の森林資源の有効活用に、少しでも貢献できる取り組みを、今すぐに始めなければいけないと強く思った貴重な2日間となりました。
木質バイオマス発電について思うこと
近年国策でFITという電力買取価格が策定され、その最も高い買取価格@40円/kwh(発電量2000kwh未満)が除間伐由来の木質バイオマス発電に適用されています。それにより、全国で220ヶ所以上の木質バイオマス発電所が計画または運用が開始されております。
当初の太陽光発電もこの価格でしたが、最近ではその半額の@20円というレベルになり、勢いは完全に衰えました。しかしながら、木質バイオマス発電においては、まだまだこれからの感じです。
フィンランドのVOLTER社が製造している、VOLTER40というものです。
その名が示すように、発電量が40kwhの超小型システムでガスエンジン方式です。一般家庭およそ70軒分の電力を発電します。
木質バイオマス発電には、およそ二つの方式があります。
直接燃焼発電(蒸気タービン方式)とガス化発電です。
ガス化エンジン発電は、蒸気タービン発電の2倍のエネルギー効率があると言われ、小規模発電システム向きです。
その問題点とは、
フル稼働して40kwhの発電をするには、毎日1トンの木材を消費すること。
こんな小さなシステムで、年間350トンの木材を使ってしまいます。
因みに、気仙沼のリアスの森さんは、800kwhの発電をしています。
単純計算で、毎日20トン必要です。
これでは、下手をすると山は荒れてしまいます。
美しい森林を維持し、継続的な循環型のエネルギーとは言えなくなります。
そのエネルギー効率は25%で、同時に100kwh相当の熱エネルギーが出ること。
つまり、熱エネルギーを有効利用できないと、薪ストーブの70%に比べるとそのエネルギー効率は遠く及ばない。
最近作ったファイヤーサークルで、一人焚き火をしながら考えてしまいした。
かかり木処理の動画を掲載しました
その林業用途での代表的な使われ方は、主に4つあります。
伐採現場での牽引搬出(集材)
トラックへの積み込み
伐倒補助(狙った方向への牽引伐採)
かかり木の処理
などです。
特にかかり木の処理は、大変危険な作業と言われております。
とっさの予想外の動きに対応が取れず、事故に巻き込まれてしまう恐れが大いにあります。
処理の仕方も臨機応変となり、豊富な経験と高い技量が必要とされます。
安全を確保するためには、とにかく材から離れておくことが何よりも重要です。
材からの距離が取れる上、状況観察が広範囲に取れるため、結果的に安全マージンが大幅に生まれ、低労力・安全確保に加えて短時間作業という大きなメリットをもたらします。
処理方法も、引き倒し以外にバンドを使ったネジリ倒しやツルを切って元口から引くなど、人手だけでは到底無理な仕事を安全にこなします。
是非、現場でご体感ください。
農文協から「季刊地域 山で稼ぐ」が発売中です
一般社団法人農山漁村文化協会から「季刊地域 山で稼ぐ」が1月5日に出版され、現在販売されています。
この季刊誌は年に4度出版され、農業・林業はもちろん、色々な田舎暮らしのテーマが盛りだくさんの内容です。出版数は毎号5万部とお聞きしました。
今号は、「山で稼ぐ」がメインテーマで、全国各地の有益情報が満載となっています。
当社のエンジン付きロープウインチも、見開き2ページのスペースをいただきご紹介させていただきました。
どうしたら、山から利益を生めるのか。
日本全国に広がる山村の過疎化の問題と直結しています。
稼げないから暮らせない。
過疎化の根源的問題です。
日本の林業のこの状況をを何とかしなければならない。
そんな私の思いと通ずる内容に、とても嬉しい思いで拝読しているところです。
これって、薪ストーブの王様?
馬搬の実演を見学しました
全国林業機械展に出展しました
11月19・20日に香川県坂出市で開催された、「2017森林・林業・環境機械展示実演会」に出展してきました。
これは、毎年各県持ち回りで開催される「全国育樹祭」の記念行事として、育樹祭の行われる県で同時期に開催されるものです。今年は香川県坂出市の番の州臨海工業団地で行われました。
坂出市は、瀬戸内海に面し臨海地区に石油コンビナートが立ち並ぶ工業都市です。
岡山からJR線で瀬戸大橋を渡り40分ほどで着きます。
大メーカーや大型展示物がひしめく中、新庄自動車さんの大規模ブースの一角をお借りし、展示実演を行ってきました。
新庄自動車さんは、林業用大型トレーラーにおいて日本屈指の製造メーカーさんです。
大型トレーラー6台を差し置き、最前列の場所をいただき、デモンストレーションを行いました。
「小さいものは前でやらないとだめだよ」と新庄自動車の佐藤社長からご配慮いただき、2日間フル回転で実演しました。
大会事務局から、全来場者数が14500人と発表されましたが、これは昨年の12000を大きく上回るものでした。我が社のブースにも非常に沢山の方々にお立ち寄りいただき、150部用意したカタログでは全く足りず、最後は名刺を渡してウェブサイトを見てくれと言うしかない始末でした。
おおよそ300人ぐらいから好反応をいただいた感じです。
来年の開催地は、東京都の奥多摩地区です。 今年よりもしっかり準備して、また参加したいと思っています。
捨て伐採という日本林業の実態
今の林業用語に「捨て伐採」という言葉があります。
この言葉は、日本に於いてとても貴重な資源である木材をまさに無駄に捨ててしまう事を言います。
何故わざわざ伐採した木材を捨ててしますのか。非常に理解しがたい実態があります。
2年ほど前、私がよく通る国道沿いの山林1.5町歩ほどが伐採されました。50年生ぐらいの杉山です。
人目に付くところでの大規模な山林伐採など、ここ何十年も目にしたことが無かったため、非常に珍しく思える光景で、何度かその現場の前を通るたび興味をもって眺めていました。
国道に面しているため、大型トラックなどのアクセスは抜群に良く、しかも平らなので重機による作業性も非常に良い条件の場所です。大型のハーベスタも入り、あっという間に伐採は進んでいきました。大型の運搬トラックなどが出入りし、順調に搬出が進んでいくのだなと思っていました。
ところが数ヶ月すると伐採された現場に、結構な量の木材が積まれたまま残されていました。
末口(根元の切り口)30センチ以上の立派な木材が結構含まれています。
玉切りの寸法も統一され、いつでも運び出せるという状態のものも含まれています。
そのうち搬出されるのだろうと思っていましたが、冬になり雪が積もり、夏が来て草がぼうぼうになり、そして気が付けば無惨な状態になっていました。
これが、話には聞いていた捨て伐採かと実感した瞬間でした。
売りやすい規格の木材は搬出されたのでしょうが、その他の木材は捨てられる。
何故そうなるのか。日本林業における助成金の仕組みがそうさせていると言います。
つまり、せっかく数十年の月日をかけて育った樹木を木材資源として無駄なく活かすのではなく、樹木を効率よく伐採することだけに助成金が出ているのです。
大型機械を導入して、低コストで効率よく片っ端から伐採していく。そして、その伐採された樹木が無駄なく利用されることなど全く興味がないという、現場実態が見えてきます。
これは正に、森林資源の無駄遣いであり、環境破壊です。
今すぐストップさせなければなりません。
山に捨て去られた木材は、やがて腐敗し二酸化炭素を排出し続けます。全ての有機物に共通の事です。
いずれそうなるのであれば、その前に燃料として有効利用し、少しでも化石燃料の使用量を減らすことに利用する。これが木質バイオマスの考え方です。重量当たりの熱量換算で、木質燃料は石油や石炭などの化石燃料に比べて2倍の熱量があるそうです。
伐採した樹木をきれいに山からかたずけることにより、その場所にまた新たな植物が育ち、二酸化炭素を吸収してくれること。これが循環型林業の姿です。
大型機械で一気に大規模に効率的に施業するのではなく、山を見ながら小規模に選別的に施業することにより、無駄がなく継続的な林業構造を日本に構築することが急務です。
軽トラックやチェーンソー、小型エンジンウインチなどでも十分林業ができます。
そういう気運が日本全国に溢れ出す日が来ることを望んでいます。
書籍の紹介「小さい林業で稼ぐコツ」農文協編
9月29日に「小さい林業で稼ぐコツ」という本が、一般社団法人農山漁村文化協会から発刊されます。
事前の新聞広告でそれを知り、早速地元仙台の支部に問い合わせしたところ、発売前にもかかわらず販売していただきました。
この本は、題目にもある通り「小さい林業」すなわち、業者に依頼せずに自分たちで自分の山を施業することにフォーカスした内容になっております。別の言い方で「自伐型林業」などともいわれているものです。
軽トラックとチェーンソーでもあれば何とか出来るのではないかといった内容です。
最近増えている「定年帰林」や「新規就林」の方たちも意識した、これから始める初心者に分かりやすガイド本でもあります。
定年帰林
長いあいだ、実家の山を見て見ぬふりをせざるを得なかったけれども、定年をきっかけに山に入り、自分で木を切る人たち
新規就林
もう少し若い年代の人たちが、地方に移り住む場合も含めて、暮らしを成り立たせるための仕事の一つに林業を選ぶ人たち
(「小さい林業で稼ぐコツ」の本文より抜粋)
当社が販売している、小型エンジンウインチへの問い合わせも、半分以上は林業会社や電設関係のプロの方たちですが、もう半分は、先祖伝来の山林を受け継ぐ方々です。 木材市況の悪さから山林を長年放置し、気づけば豊富な蓄積量を持つ自分の山をこれから何とかしたいという思いの方々です。皆さん自分でやろうとしています。そんな時期に日本は来ています。
これから始める方々に是非読んでいただきたいと思い、ご紹介させていただきます。
「田舎の本屋さん」からもご購入できます。
木質バイオマス発電が日本林業を救うのか
しかしながら、一旦途絶えたビジネスの流れは、作り直すのに時間がかかります。さらに、以前の日本とは需要構造が大きく異なります。かつて主力だった住宅建築は、少子化と家余りにより減少傾向の上、住宅の作り方が全く変わってしまったため、一戸あたりに使われる木材の使用量がとても少ないのです。